サイエンティフィック慣用句
作者名: トルネードおさげたん
「……プレートの流れは時代の流れ」
「何よそれ」
「ことわざ」
「へー、そんなのあるのね。プレートの流れはプレートテクトニクスの?」
「それ」
「意味は?」
「不明」
「何でよ」
「なぜなら今私が作ったので」
「何でよ!」
「ということで『プレートの流れは時代の流れ』の意味を考えていきたいと思う」
「普通ことわざって意味から先に作るものじゃないの?」
「いや? ことわざは作るものじゃなくて自然と生まれるものなんだが?」
「十分の一貫性もないわね」
「充分な一貫性?」
「0.1貫性もない」
「お、ことわざじゃん」
「ことわざではないわよ」
「我々はウェゲナーに立ち返って考える必要がある」
「世界地図を見て、アフリカの左辺と南アメリカの右辺がくっついてるように見えた話かしら」
「パンゲア超大陸からプレートが離れていって今の大陸の形に移動した。つまりプレートの動きを見れば時代がわかる……」
「文字通りの意味ね。間違ってはいないけれど」
「プレートの動きを見れば時代の動きがわかる?」
「数十年幅の時代の動きはプレートテクトニクスからはわからないわよ」
「つまり、『トンデモ理論』という意味!」
「プレートテクトニクス理論自体はちゃんとした理論なのよね」
「残念」
「残念ではないわよ」
「プレートが動くと何が起きるかということを考えてみましょうか」
「だから、大陸が移動するんでしょ?」
「長期的にはその通りだけれども、短期的にはもう少しいろいろあるわよ」
「なるほど。地震とか火山噴火とかハワイ島の移動とか」
「ハワイ島の移動は長期的な話ね」
「じゃあハワイ島の観光」
「個人的な話ね」
「温泉観光」
「ハワイ島に温泉ってあるのかしら」
「あるんじゃない? 海があるんだし」
「何で海が出てくるのよ」
「ハワイなので」
「そうじゃなくて」
「海水温が高くなればそれはもう立派な温泉だなって」
「仮に海水温が他より高かったとして、ほぼ太陽の影響じゃないかしら」
「つまり太陽は温泉」
「いいえ」
「というかプレートはどうなったのよ」
「そんなこと言ってもハワイはプレート無関係火山だし」
「ダメじゃないの」
「ダメでした。ハワイはダメ!」
「そうだけどそうじゃないわよ」
「ハワイは反プレートテクトニクス観光地。みんな親プレートテクトニクス観光地の草津とかに行くべき」
「初めて聞いた二分法ね」
「やっぱり親プレートテクトニクス観光地はもっとプレートテクトニクスを推していくべきなんだよね」
「普通の人は温泉に入りながらプレートテクトニクス理論に思いを馳せることは稀よ」
「義務教育の敗北かな?」
「義務教育を何だと思ってるのよ」
「何なんでしょうね」
「急に聞き返されると困る所ではあるわね」
「プレートテクトニクスと関係があることは確か」
「ないことはない……あれ、プレートテクトニクス理論は高校内容じゃないかしら」
「敗北してしまった」
「ということで義務教育外の単語を使ったことわざは難しいわね」
「でもグルコサミンは義務教育外じゃない?」
「何のことわざよ」
「ぐるぐるぐるぐるグルコサミン」
「ことわざではありません」
「企業のキャッチコピーはもはやことわざでは」
「いいえ」
「Done is better than perfect.」
「それは企業のキャッチコピーとはちょっと違う気がするのだけれど」
「風が吹けば桶屋が儲かる」
「それは完全に企業のキャッチコピーではないわね」
「……はっ、風が吹けばプレートが動く!」
「動かな……あれ? いや、結局動かないわよ!」
「その通り! 『違う、と見せかけてそう、と見せかけて結局やっぱり違う』という意味です!」
「使い道が限定的すぎるわよ!」
「大丈夫、『どんぶらこ』よりはある」
「それもことわざじゃないけれど、十理あるわね」
「……重リアル!」
「ことわざ!!」
プレートに 流れは存在 しませんが?
移動するだけ。 ウェゲナーエアプか???