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流行

作者:少女K

流行なんて下らない。

 

ゲームも本も。

ドラマも歌も。

食べ物も服も。

 

所詮、一時の熱に過ぎない。

 

そんな流行に踊らされている周りの人々が、

愚劣で。滑稽で。憫然で。

時には憐れみさえ感じる程だった。

 ……あの時のきっかけは覚えていない。

しいて言うなら、ほんの気まぐれで、偶然だった。

私はその「流行」を見てしまった。

 

それは見たことのない世界だった。

新しい体験の連続にガンッと頭を殴られ、

心臓は高鳴り、チカチカと目眩すらした。

あらゆるものがキラキラと光り輝いて見え、

「流行」と比べたらすべてのものが時代遅れに見えた。

 

私は文字通り夢中だった。

目についたものはすべて漁り、眺め、

自分で手にし、楽しみ、時間を溶かし、

時には寝食すら忘れ貪り……倒れた。

 

幸い命には別状は無かったが、

周りからこっぴどく怒られ、

ようやく冷静になり、自問自答することができた。

 

自分の姿はかつて蔑んでいた人々そのものではないのか?

 

「流行」に夢中で白いベッドに横たわる私の姿は、

あまりに愚劣で。滑稽で。憫然で。

自傷の笑いが止まらなかった。


 

――あれから数か月。

 

僕はまだ「流行」に夢中なままでいた。

……と言っても、倒れるような事は、

一切しないように気を付けてはいるが。

 

ただ、いくら新しい流行も、

広まり切ればよく見る風景。

そして、普遍的になれば、

良くない話も頻繁に聞くようになった。

 

興の醒める出来事が起こっては、

あれだけ沸き上がった周りの熱は冷め、

目が覚めたと離れる人が増えていった。

大小の蟠りを残して。

 

その中の一人の苦言が目に留まる。

「しょせん、一時の流行だ。」

僕は苦笑した。あの時の僕がいた。

 

改めて自問自答する。

自分の姿はかつて蔑んでいた人々そのものではないのか?

 

違う。――いや、今は同じだろう。

 

大勢が夢中になっている物を、

貪り、時間を忘れ、寝食すら疎かにする。

これが別物だなんて言ったら、それこそ言い訳に過ぎない。

 

ただ、それでも違うと言い張れるのは、

長い年月が経ったとしても、

誰もが見向きをしなくなったとしても、

僕は此処にいる自信があるからだ。

 

流行なんて下らない。

今でもやっぱりそう思う。

ただ、入口の一つとしてみれば、悪いものではなかった。


 

 世間は言うだろう。

流行に乗れなければ、時代遅れ。

流行に乗り続ければ、時代遅れ。

つまり僕も、近いうちに時代遅れに戻るのだろう。

 

それでも出会えた「流行」を、

いつまでも愛したっていいじゃないか。

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