top of page

クリスタル英雄譚

作者名:神處AIS(じんじょ あいす)

クリスタル王国前時代

「もう逃げ場はないぞ」

いつの間にか2人は窮地に追い込まれる

「ほぉう...なら、ここを通りたくば俺を殺せ」

「何やってるの、逃げて!」

バンバン、と、銃声が響く

「このまま、俺はここで死ぬんだ...悔いはない」

その英雄の姿は

「次の時代を...託したぞ...!」

悲しくも、勇ましかった

「やめて...!逝かないで!!」

「お父さん!!」

 

遡る事26年前

私は1人の英雄と冒険をしていた

その英雄は国からも愛される程有名だった

彼の名前はシャラ・ヘイセーク

私の父だ

私は王家の長女として生まれた

だから次の時代を継承するのは重々承知の上だ

ある日私は父を連れ共にクエストを攻略していた

父は剣術、魔法、何でも使える凄い人なのだが、私は剣術も出来なければ魔法も使えない王家の長女だ

「グルル」

「レイリアル、後ろ」

「へ?」

ブォン!

父は私の後ろにいたモンスターを瞬殺した

いつも繰り出される技はどれも強力だ

いつかこんな父の様になれたなら...お供する度いつも思う

クエストが終わり一旦帰りの救援を2人で今の悩みを父に打ち明けながら待っていた

「でね私、そういう事だから次の時代を継げるか心配なの」

私は困った顔で悩みを打ち明けた

すると父は

「ガッハッハッ!そんな事か」

そんな事とは何だ、そんな事とは

「父さんだってな戦うのは怖いぞ」

「えっ...怖い...の?」

「そりゃあもちろん」

「だって人はいつ死ぬか分からないだろ?

そんな事を考えながら戦ってたら、誰だって怖いって思うだろ?だから怖い」

「そう...なんだ」

「だが、俺には帰りを待ってくれている国民達がいる」

「そいつらの為にも今を生きねぇとな!」

「うん...私寝るね」

「おうよ」

「只今到着致しました、救援班です!」

「お勤めご苦労様」

「では、お父様からこちらへ」

「あぁ、助かる」

「...ッ!お前ら、まさか...!」

「今頃気付いても遅い、殺せ」

「隊長、あの娘はどうしましょう」

「構わん、同じく殺せ」

「イエッサー」

「させるか!」

「おぉっと困りますよお父様、そこをどいて下さい!」

バンバンバンと銃声が響く

レイリアルは目を覚ます

が、今何が起こっているのか上手く把握出来ていない

「もう逃げ場はないぞ」

いつの間にか2人は窮地に追い込まれる

「ほぉう...なら、ここを通りたくば俺を殺せ」

「何やってるの、逃げて!」

バンバン、と、また銃声が響く

大丈夫だ、と、父は微笑を浮かべた

「うわぁ!」

相手の兵はどんどん倒れていく

「俺の剣術、魔法を...舐めるなよ!」

父は救援を偽っていた10人中、9人を倒した

「残りはお前だけだ」

「ッ...!」

「俺の全身全霊最後の魂を込めて、斬る!」

「ヘイセーク・ラストオーダー!!!」

「ぐわぁ」

「ふぅ...」

「お、お父さん!待って!今本当の救援呼ぶね」

「あぁ、頼む」

そこから約10分後、救援班がそろそろ着く頃だ

「ぐあっ!」

「どうしたの?!」

「どえやら、さっきまで食らった銃弾に毒が盛られていたみたいだ...!」

「あぁっ...!」

「お父さん!救援班、急いで!」

「嗚呼、俺はこのまま、ここで死ぬんだ...別に悔いはない」

「何言ってるの?!お父さんの帰りを待ってる国民が沢山いるんでしょ?!」

「お父さんがいなくなったら、私だけじゃなくてその他大勢が悲しむ!お父さん必ず帰るって、約束したよね?!英雄なんでしょ?!だったら、死なないで、死なないでぇええええ!!!」

「誰かが泣けば、皆が望んだ未来ではなくなっちゃう」

「それはもう平和なんかじゃない!」

「すまないな、レイリアル...あまり遊んでやれなくて...」

「だが、お前には沢山の可能性が秘められている」

「ううん、そんな事ない!」

「何故なら、俺の遺伝子を受け継いでいるからな...」

「次の時代を...託したぞ...!」

「やめて...!逝かないで!!」

「お父さん!!」

 

結局、救援班が到着した頃には父は戦場で息を引き取った

 

あれからもう26年が経った

私には5人の子宝に恵まれ、毎日決まった時間にあの日、父から教えてもらっていたメニューで特訓をさせている

毎日家事もこなしている

剣術や魔法の訓練も怠らない

あの当時、まだ12だった私もこんなに幸せになった

そして今ではこの国の英雄となった

剣術も一流になったし、魔法も難なく使いこなせる

 

そして最期に、父は亡くなる直前にこんな事を書き記していた

『人と言うものは支え合って生きる事、つまり英雄にも同じ事が言える。それは、国民が英雄を支え合い、英雄が国民を支える事』

お父さん、確かに時代のバトン受け取ったよ

今度は私が次の時代へバトンを繋ぐ番

それまではまだ死ぬ訳にはいかないので、子供達に剣術と魔法だけでなく、他の術も教えようと思います

お父さんの魂は私の胸の中にいるから

「ママー!練習付き合ってー!」

「!」

「いいわよ〜?ただし、手加減しませんから、ねー?」

 

今日もクリスタル王国は、愛と、希望と、何かを成し遂げる力

そして1人の英雄の力で今日も平和です

bottom of page